ヒドラ 2019

  国:Spain (スペイン)
 地域:Cataluna (カタルーニャ)
 品種:2019年のすべてのブドウ
タイプ:Red (赤)
 栽培:ビオロジック
 SO2:瓶詰め時少量
 度数:10%

インポータコメント
亡くなった愛犬の名前をキュヴェ名に冠しました。
2019年の醸した後すべてのブドウをデキュヴェしプレスしたジュースのブレンドをステンレスタンクで発酵後、アンフォラでマロラクティック発酵・熟成しました。

ブラックガーネット色、カシスやブラックチェリー、湿った土の香り、ボリュームのあるアタック、しっかりと存在感のあるタンニン、ボリュームのあるコクがアフターへと流れます。


■生産者
Sicus (シクス)
本拠地:スペイン・カタルーニャ

“瑞々しい酸を保ちながら、地中海の自然をそのままボトルに詰めること”。
SICUS(シクス)の造り手、エドゥアール・ピエ・パロメールの哲学です。

次々と新しいナチュラル・ワイン生産者を輩出し、スペインのナチュラル・ワイン業界を牽引するカタルーニャ地方。
あのパルティーダ・クレウスも最近のスター生産者の一人ですが、彼と同じ村Bonastre(ボナストレ)村で、若かりし頃から、流行が生まれるずっと以前の2009年から畑と向き合い、自らが信じる道を歩んでいます。
畑に化学薬品が散布されることは一切なく、耕作機を入れることも滅多にありません。
地中も含めた自然の生態系バランスを保ち、人間の介入を最小限に抑えることで、畑が生み出す果実のポテンシャルを引き出そうとしています。
ボナストレ村の自然をワインに表現しようとする、飽くなき探究心、こだわり、理想の栽培と醸造方法をストイックに追求する姿勢には目を見張るものがあります。
未完成の完成、理想を目指して急速に成長している生産者です。

シクスとは、ギリシャ語の“SICCUS(シックス)/灼熱の大地” という言葉を起源にした言葉で、醸造家のエドゥアールは、地中海の渇いた大地を表現しています。
それながらフレッシュで自然体、瑞々しさ溢れるワインを目指しています。
エドゥアールは100年前より続く、25haの広大な土地を所有する農家の3代目。
祖父の代ではワインは自家消費のみで、その他のブドウは大きなワイナリーに販売していました。父はトマトのハウス栽培。
ブドウ栽培を主な家業にした事がない家系です。
小さい頃からあまり勉強に興味のなかったエドゥアールは、中学生の頃から醸造に興味を持ち、高校には進学せずワイン造りと栽培を教えてくれる専門学校に進みます。
その後も醸造学と様々な視点からワインを捕らえようと、ソムリエのコースを履修。
2009年に、大量生産や造り手の介入が主体となったオリジンの見えないワインとは対極に位置する、シクスのプロジェクトを立ち上げます。

海に一番近く、標高の低いチャレッロが栽培された区画“ラ・カセタ”、標高200mほどで、砂礫の多いロームと粘土質の混ざった土壌の“オバガ・デル・ゴジョ”など6区画に分かれています。
全ての区画は山に囲まれており、豊かな生態系に恵まれています。
2020年にはさらに6haを購入してそのうち2haに植樹しました。
ちょうど訪問時は大規模な開墾の真っ最中でした。
自社畑のほか、借りている畑もありますが、栽培はエドゥアール自身が行っています。
全て自然農法で栽培され、地中の生態系バランスも大切にするため、また地中有機成分は少なく、湿度も低い(乾燥)ため、トラクターで土を耕したり掘り起こすことはありません。
近年の極度の乾燥により、畑のグリーンカバーを切らざるを得ませんでしたが、それまでは一切手を加えていません。
草刈りも冬に動物を入れて食べさせます。
ワインはオーガニック認定を受けている他、栽培方法はビオディナミに近いです。
硫酸銅のほか、ハーブの発酵エキスのみを畑に散布。
これまで地中海産のワインは凝縮感が強く、重く、アルコール度が非常に高い平坦なワインとの先入観がもたれてきました。
しかし昨今、そんな固定概念を打ち破るスペインワインが次々に誕生しております。
そしてこのエドゥアールのワインも冷涼さと緻密さがスペインのテロワール上で実にナチュラルに表現されています。
ワイナリーが居を構えるマシス(山塊)・ボナストレは、地中海沿岸から5kmほど内陸に位置し、標高が170-400mと昼夜の気温差が大きいのが特徴で、土壌は砂礫が含まれた粘土石灰質。
石灰も多く混ざる地中海独特の土壌。
長い日照時間と少雨という過酷な条件にありますが、標高と湿度を運んでくれる海風、石灰質の土壌という好条件が重なり、ミクロクライメートが創り出されます。
酸と果実味、ほのかな潮風の香るバランスが取れたブドウが収穫されるのです。
ワイナリーシクスでは、“シクス”と“ソンス”という2ブランドのワインを造っています。
いずれも、潮の香り、しっかりとした酸があることが重要と考えられており、全てのワインが単一品種、単一畑のブドウから造られます。
“シクス”のシリーズは収穫後セラーで醸造を行うのが基本です。
このシリーズで特に面白いのはスパークリングワイン。
チャレッロをシャンパン製法で造ったものですが、醸造所でかなり長期熟成させてのリリースです。
これだけ拘っているのにDOカヴァには申請すらしないところも彼の人となりを表しています。
またかつてよりマセラシオンした所謂オレンジワインstyleも積極的に仕込んでいます。
“ソンス” (Sounds カタルーニャ語で“音”の意味)シリーズはさらにユニークです。
畑の中に埋められた10個の200L容量のアンフォラに、収穫後すぐにブドウを入れ、その年の12月までマセラシオンします。
アルコール発酵、マロラクティック発酵を外部からの接触を絶ちながら畑の中で行う事で酸化を防ぎ、畑の持つ景色そして区画の特徴をそのままワインに写そうという考えのもと仕込まれています。
マセラシオン後もプレスはせずフリーランジュースのみをポンプで吸い上げ、醸造所で熟成させます。(小さなトラックの荷台にタンクを積み、そこにジュースを吸い上げ、タンクを醸造所へ移動させます。)
このように独自な路線を開拓しているエドゥアールですが、とても優しい一面とビジネスマンとしてやり手の一面も備えています。
虐待されていたロバ2頭と保健所に引き取られていたドーベルマン2匹を引き取り、畑そばで飼っています。
ロバは背中もへこんでいて足も動かずとてもかわいそうな状態だったところを助け出したそうです。
もうすでに30歳だそうで畑仕事をさせたりするのではなく、余生を畑でゆっくり過ごさせているそうです。
そしてスペインもかなり酷いコロナ禍をくぐり抜けています。
生産者達も収入的には大ピンチの方々も多いようです。
そこで彼は毎週末シェフを招いて畑や自宅でパーティーを催し、時にはDJも呼んでラウンジ的な雰囲気でワインを楽しむ環境を造りだしたりと、田舎の小さな村でワイン・料理・音楽を楽しみ五感を刺激する環境を創造しピンチを凌いだそうです。
弊社のナチュラル・ワインのポートフォリオの中では久々にちょっと奇抜なスタイルと言えるSicus。
個人的にはジュリアン・メイエ(アルザス)やグラップリ(ロワール)、ゲオルギウム(オーストリア)がお好きな方々にはぜひ一度お試し頂きたいなと考えております。

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