カルパテンシーファー・グリューナー・ヴェルトリーナー 2017
国:Austria (オーストリア)
地域:Carnuntum (カルヌントゥム)
品種:Gruner Veltliner (グリューナー・ヴェルトリーナー)
タイプ:Orange (オレンジ)
土壌:石灰
栽培:ビオディナミ
SO2:無添加
度数:12.5%
インポータコメント
ウィーンの東からオーストリアとスロヴァキアの国境まで拡がるカルヌントゥム地域で複合農家を営む両親から全てを受け継いだヨハネスがグリューナーヴェルトリーナーをアンフォラで醸し発酵・熟 成、SO2無添加で瓶詰めしました。
憂いのあるイエローの外観から、 ジンジャーや鉱物系の香り、エキスを含んだ滑らかな口あたり、 ふっくらとした酸の奥に塩気を伴う複雑な余韻が続きます。
■生産者
Johannes Trapl (ヨハネス・トラプル)
本拠地:オーストリア・カルヌントゥム
作り手:ゲアハルト・ピットナウアー
1978年生まれのヨハネス・トラプル、丁寧で誠実な物腰にやさしい眼差し、裏腹に強く固い意志をうちに秘めている彼は若くして両親から農業を引継ぎます。
ヨハネス・トラブルのワイナリーがあるのは、ウィーンから東へ40km、ちょうどノイジードラーゼ湖との中間にあるカルヌントゥム地域のザラスドルフ村でヨハネスの両親は複合農業を営んでいまし た。
ワイン造りも行っておりましたが、ワイン生産地としては全くの無名の地域でした。
2019年にDACに認定されたカルヌントゥムのワインも、“廉価でコスパが良く飲みやすい、ゆえにウィーンのカジュアルレストランでよく飲まれていた”、そんな認知をされていた時代でした。
ワイン造りのみに集中するか、両親が営んできた複合農業を続けるか、ヨハネスの人生の最初の大きな選択は早くも20代半ばにやってきます。
ワインか食品の道へ進めば将来は約束されているはずだ、と信じるヨハネスはまずは農業の職業訓練学校へ進みます。
1998年に卒業、その後すぐにさらなる実践的なワイン造りの経験を求めてカリフォルニアはナパにある“カーディナルワイナリー”に研修に行きます。
そこで完全にワインウイルスに感染、ナパで数多の経験を得たのはもちろん、 多くの仲間や同業者、沢山の優れたワインとの出会いにも恵まれます。
ナパでの仕事を評価され、遂にはカリフォルニアで働くいくつかの好条件のオファーをもらうまでになりましたが、両親と話し合った結果、彼が選んだのは実家へ戻る道でした。
2003年、両親は彼に事業の全ての権限(全てのブドウ畑0.5ha含む)をヨハネスに譲ります。
大きな責任と共に。若干25歳にして家族の財産と歴史を受けついだ彼ですが、有り余るエネルギーを満たすにはそれでも足りず、現在カルヌントゥム最良のブラウフレンキッシュ生産地に成長したシュビッツァーベルグで、同様に最大の生産者へと成長したムール・ヴァンダー・ニーボートでも同時に働き始めます。
当時カルヌントゥムのワインは、主にツヴァイゲルトで造る濃く重いワインと世の中に認識されていました。
ザラスドルフ村から30kmほど東へ行ったPrellenkirchen(ブレレンキルヒェン)村の近く、そこはスロヴァキアの首都ブラチスラヴァからも南西に僅か20km ほどなのですが、Spitzerberg(シュビッツァーベルク)という小さな丘(隆起)があります。
地質学的にはカルバティア山脈の西端であり、アルブスとの境界 線ともいえるかもしれません。
このあたりでは非常に珍しく微細な石灰岩でできたサブリージョンがあり、ブラウフレンキッシュの古木がわずかに生き残っ ていました。
この地域で作られたブランフレンキッシュは、ハブスブルグ家全盛期にその高い名声を誇りましたが、その後はすっかり忘れ去られていました。
ムール・ヴァンダー・ニーポートのドリル・ムーア女史との仕事を通して、この地の畑の存在と可能性を知り2004年に畑を得るチャンスが到来します。
その後、彼のブラウフレンキッシュ 2004年ヴィンテージは世の中で大絶賛され彼は両親から財産を引きついでわずか2年目の仕事で一気にオース トリアワイン業界に華々しくデビューとなりました。
標高185 ~ 200m、僅かのシストを含んだきめ細やかで良質な石灰土壌。
年平均雨量わずか300mmという乾燥した気候にも恵まれ病害にもほぼ 無縁です。
現在はわずか9ワイナリーのみが100haのこのエリアのうちわずか20haの畑でブラウフレンキッシュを栽培しています。
ヨハネスは5haの土地を有し、前述したドリル・ムーア女史に次ぐ規模を誇ります。
彼がシュピッツァーベルクで造るブラウフレンキッシュの生産量は年間わずか2,500本前後です。
彼の畑は2010年に初めてオーガニック認証を取得し、2016年には全ての畑で認証を得ます。
今ではビオディナミ農法の原則にも従い、ブドウの栽培を行っています。
ブドウがどれだけ自立して健康に生き生きと育ったかがワインのキャラクターに直結するという考えのもと、畑には一切科学的な物質は散布しません。
ブドウの収穫のタイミングの見極め、完熟とフレッシュさのバランスも美味しいワイン造りには重要だと考える彼は計測器を使うのではなく、自ら食べて感じて収穫のタイミングを計ります。
完熟させるブドウ、早い時期に収穫するブドウ、それぞれブドウ樹のその年の状況を見極めながら選別しています。
そうして収穫したブドウをセラーで醸造する際のモットーは、(ナチュラルワイン造りではよく効かれるフレーズですが)余計な人為的介入はせず、“Let them be”です。
セラーでの決定事項は樽のブレンドだけだといいます。